コラム
地方行政と学校に広がるEMの活動 青森からの報告とマスコミの責任
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- 作成日 2013年10月15日(火曜)18:53
- 作者: 松田卓也
朝日新聞・前青森総局記者
長野剛
2012年7月3日朝日新聞青森県版
- 2011年度に青森県の7校以上でEM菌を用いた環境教育が行われていた。多くは川にまいて「浄化」をするものであった。
- 県庁も1部の学校に資材を提供して協力した。
- 複数の公的研究機関が水質浄化効果に対する否定的な研究事例を報告している。
- EM推進側の効果は「重力波による」という主張の紹介と、 「非科学的」との批判を載せた。
- 青森市内の事例を紹介した。
朝日新聞青森県版で取り上げた青森市内の中学校の例
- 活動開始は1999年(2013年度から停止)
- 年数回、学校で培養したEM菌を近所の川に流していた。 2011年では計1,170リットルを流した。
- 美化委員(各クラス2名)が担当した。
- 委員以外も自宅から培養に使う米の研ぎ汁を持参するなど協力した。
- 水質浄化などの効果について疑問を感じた生徒もいたが、教師は「信じよう」と指導した。
- 教師は「県が配ってくれたものだから、効果を信じた」と述べた。
青森県の背景
- 2004年に、東青森地域県民局(青森市・東津軽郡を管轄)は管内の希望する学校にEM菌の原液配布を開始した。
- 前副知事(2,003から2,011 )はEM菌に強い期待・支持を持っていた。
- 前副知事の弁によると、 7から8年前、むつ湾浄化のためにEM菌の海洋散布の検討を担当部局に指示した。養豚の消臭にも活用検討を指示。いずれも「事業化ならず」
2012年7月11日朝日新聞青森県版
- 板柳町、中泊町、鰺ヶ沢町の三町は、 EM菌を培養し町民に配布。板柳、中泊は無料配布、鰺ヶ沢町は1リットル50円で販売した。
- 板柳町はEM菌の販売業者に4,000万円を支払い、 EM菌のリンゴ栽培での効果検証を委託した。結果は「糖度が上がった」という。しかし専門家は「科学的検証としては無効」という。
- 有識者は「行政が進めることで、効果のお墨付きと取られる。科学的に証明されていない物を行政が勧めるのは問題」
朝日新聞青森県版で取り上げた中泊町「中里地区」のEM菌培養施設
- EM菌の培養施設兼配布所。住民は入れ物を持ってくれば無料で培養液を持ち帰れる。
- 左奥が「活性液」を培養する装置「 EDD 」 (EMどんどん ) 。 2004年に47万6,000円で購入。
- 手前など500リットルタンク5個と1トンタンク1個で常時培養。
- 年経費は2009年度40万435円、 2015年度37万4,284円、 2011年度30万2,676円。
- 無料配布は小野俊逸町長の音頭とりで実施「業者や青森市議、町議に聞いて」
- EM菌の無料配布は旧小泊村の地区でも実施。小泊ではほかに「 EM菌とフルボ鉄を混ぜた」 (役場)という「鉄太郎」の海洋散布も。
朝日新聞のEMに対する無批判な記事
- 福岡県版2010年5月29日付「 EM菌は乳酸菌や酵母などを培養した溶液で、悪臭やヘドロの発生を抑えたり、汚れを分解すると効果があるとされる」
- 福岡県版2012年2月15日
- 「環境都市・北九州」も支える市民活動を紹介する連載。生ゴミを堆肥化した無農薬野菜づくりをする市民グループを紹介しているが、 「 EM 」は商品名であることの説明がない。
新聞のEMに関する初出は1994年1月27日
全国面は38、地域面286、週刊朝日など3、合計337
2010年から計27本で、メインテーマ13、効果の疑問4、イベント13
公開討論会 EMについて考える Togetter
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- 作成日 2013年10月15日(火曜)16:01
- 作者: 松田卓也
2013年10月13日(日曜)に学習院中・高等科において、ジャパンスケプティックス主催の公開討論会「EMについて考える」が開催されました。まず私(松田)の挨拶の後、京都女子大学の小波秀雄さん、つぎに朝日新聞の長野剛さん、それから神田外語大学の飯島明子さんが講演しました。その後、菊池さんを加えてパネル討論がもたれました。会場からの熱心な質疑、試験表明がなされ、非常に有益な会でした。講演要旨は別稿をご参照ください。
講演中から話の内容がTwitterで発信されました。その内容については以下を参照ください。
http://togetter.com/li/576360?page=1
パワポファイルをもとにした講演内容の詳細は、後に編集して会誌に掲載する予定です。
「杜の里から」というブログに「EM討論会に参加する」という記事があります。
EMは水を净化できるか
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- 作成日 2013年10月15日(火曜)14:46
- 作者: 松田卓也
飯島明子(神田外語大学、日本べントス学会)
「水質汚染」
どのような污染なのか、整理することが肝要。原因も対策もさまざま。
- 化学物質による汚染
- 放射性物質による汚染
- プラスチックによる污染
- 有機汚濁: EM推進者が「効く」としているのは主にこれ。人間の生活に最も身近で、どこにでも起きる大問題。
有機汚濁
閉鎖水系(湖、池、内湾など)で起きやすい。(流れのゆるやかな川でも)
有機物が水中に多すぎる状態。指標:BOD,COD,TNなど。
原因:有機物が直接水中に流入
N,P負荷が大きい
植物プランクトンやPOMを摂食する生物が足りない(その生息空間が足りない)
N, Pはー次生産者に不可欠の元素。
陸上のー次生產者:主に植物
海洋のー次生産者:植物プランクトン、付着微小藻類、海藻、海草、造礁サンゴなど、多様。光合成のため光が必要。陸域からのPOMもー次生産とほぼ同等。
植物プランクトン: 珪藻、緑藻、渦鞭毛藻、ユーグレナ、シアノバクテリアなど、多様。
海藻:紅藻、褐藻、緑藻など。褐藻は岩礁域の海中に藻場を作る。
海草:陸上植物が海に戻ったー群。砂地の海中に藻場を作る。藻場は魚など多くの生物の隠れ場、棲み場所、産卵場、生育場として重要。
サンゴ礁: 造礁サンゴが亜熱帯以南で形成。動物性のポリプに単細胞藻類が共生しているため、全体として一次生産者に相当。
植物プランクトン:水中~陸域までの物質循環の要。いなけれぱ困る。ただし增えすぎると問題。
植物プランクトンを基点とする食物網について紹介。
水中にN,Pが多過ぎ、光と水温の条件が整うと、植物プランクトンは爆発的に増殖(赤潮)。(単細胞なので增殖速度が早い)。海藻、海草などは植物プランクトンのように素早く增えることができない。
植物プランクトンが增えすぎると、
1) 水の表層で植物プランクトン増加->光合成に必要な光を吸収->水底光不足->海藻 · 海草育てず->藻場依存の生物全滅。
2)植物プランクトンの分泌する有機物と、死んだ植物プランクトン自体が水底に沈降->細菌による分解->酸素消費->貧酸素水塊(無酸素水塊)形成ーべントス全滅。
3)貧酸素水塊の湧昇(青潮)により、浅い水域でもぺントス等全滅。
浅い水域の減少も水底の貧酸素化の原因
青潮の起きる仕組みについて
干潟の役割
ベントスが植物プランクトンやPOM、表層の有機物、泥中の有機物を摂食。鳥、魚、ヒトなどがべントスを捕食することにより、N,Pを系外に取り出す。,
脱窒。
ベントスの巣穴の存在により脱窒効率が上昇。
有機汚濁水域で人間のできること
有機物やN,P負荷の削減。
浅い水域の保全、および失われた浅い水域を取り戻すこと。,
持続可能な形での漁業。
EMはどれにも寄与しないので不要です。脱窒細菌は元々います。撒くまでもなし。
EMとはなにかーその主張を検証する
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- 作成日 2013年10月15日(火曜)14:38
- 作者: 松田卓也
小波秀雄
京都女子大学现代社会学部
- EMは何に有効とされているか
一農業関連の効果効能
収量の大幅増加,残留農藥の分解,除草,病告虫駆除
一健康と医療に関する効能
がん(末期がんを含む),糖尿病などの生活習慣病,アトビー,花粉症,二日酔い、便秘、排泄物無臭化
一環境への影響
富士山の大沢崩れの防止,生ごみ処理,
一建築材料への応用
コンクリート,ゴムの強靭化
一EMセラミックス
EM茵は700°C(後には1200℃)でも死なない
净水器,粉末を散布して畜舍の浄化,家庭排水淨化,燃費向上(30%以上)
- EMの効果の検証
一冲縄県における検証と県政の対応
沖縄県では1985年以降,数次にわたってEMの効果の検証実験が試みられたが,2006年にEMへの研究は「再現性が難しいJ「長年に渡り結果が出ていないJという評価がなされて,一連のEM硏究は終了した。
一土壌肥料学会公開シンポジウム「微生物を利用した農業資材の現状と将来」1996年8月
一「微生物資材の土壌肥料学的評価」後藤逸男
「土と微生物JVol.83(2),1999
-"Cyanobacteria blooms cannot be controlled by Effective Microorganiams (EM) from rnud-or Bokashi-balls",
Miquel Lurling Yora Tblman · Frank van Oosterhout, Hydrobiologia (2010) 646 : 133-143
以上の3つの文献で,EM中の光合成細菌の存在はほとんど見られないことが報告されている。
- EM「除染」の危険
一比嘉氏が放射線について語っていること
EMの中核をなしている光合成细菌は,条件次第では粘土に混ぜて1200℃以上でセラミックス化しても,そのセラミックスから再度,光合成細菌を取り出すことが可能であり,ガンマー線やX線や紫外線を光合成のエネルギーとして活用得る力を持っています。
予備的な成果は,すでにチエルノプイリ原発事故で被災Lたべラルーシやウクライナでも確かめられており,施用の方法によっては1-2年でクリーンにすることも困雌なことではありません。理屈ではなく,放射能が消えたか否かは测ってみれはわかることです。
一EMによる作物への移行抑制実験
「微生物土壌改良材(EM)を活用した土壌改良による放射性物質の農作物への移行抑制」比嘉照夫他,第1回環境放射能除染研究発表会,2012年5月福岛市。曖昧な結論Lかない。
一EM情報室の発表「福島県の検査でEMでセシウムの移行抑制を実証」
福島県の実証試験によると,EM堆肥によるセシウム移行の効果があったと主張。実際には,データをよく読むと,他の資材にくらべて成績は悪い。
- 比嘉氏の言説を読む
キーワード:抗酸化作用,波動,光合成細菌
ーニセ科学系言説との類似性,親和性
水からの伝言,マイナスイオン,ホメオパシー,その他
一聞きかじりの物理 · 化学用語の濫用 · 誤用
1992年の「波動の作物生理学Jの時点で,まったくのトンデモ論を展開
- EMの何が問題なのか
一放射能の除染ができるという妄説の危険
一学校における反理性的な教育
一地域の環境净化運動との結びつき
ーニセ科学の蔓延は社会進歩を妨げ,市民社会の基盤を危うくする。
「またまた永久機関」に関して神戸大学から
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- 作成日 2013年9月24日(火曜)17:47
- 作者: 松田卓也
「またまた永久機関・・・海水発電」と題する2013年6月11日の記事に関して、9/21に神戸大学海事科学研究科のホームページ管理部会の方からメールをいただいた。それは私の該当記事に誤解があるというものだ。その要点を箇条書きにする。
1 西岡氏の発表を海事科学科の公式サイトに掲載した事実は一切無い。
2 西岡氏が共同通信PRワイヤーというサイト上で「個人的」に発表した際に、公式サイトのロゴ画像をおそらくコピー・ペーストとして無断で使用した。そのことが公式サイトに出たという誤解を生んだ。公式サイトのコンテンツは管理部会が内容を精査したもののみ掲載するので、この種の記事が公式サイトにでることはない。
3 西岡氏の受賞事実に関しては、それが確認されれば、原則掲載せざるを得ない。
4 西岡氏の発表経緯は次のようなものだ。前述の共同通信PRワイヤーに個人的に発表。報道機関(大手新聞、放送局等)に連絡を取り、個別に取材を要請した。そのなかで神戸新聞の記者(社会部)のみが夕刊記事にした。マスコミ報道はこの1件のみ。神戸新聞の記者も当惑。
5 共同通信PRワイヤーの個人的記事は、管理部会からの連絡により、サイト側の自主的判断でロゴ画像は非表示とされた。